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XR(クロスリアリティ)とは?今さら聞けない基礎知識とビジネス活用事例
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生成AIは、もはや業務効率化の道具にとどまらず、「事業そのもの」を変革する可能性を秘めています。特に、プロダクトやサービスの中に生成AIを組み込み、新たな価値を提供する企業が次々と登場しています。
本記事では、生成AIをビジネスやサービスにどう応用していくかをテーマに、活用メリットや成功事例、導入手順、留意すべきポイントをまとめました。
生成AIは、多くの企業にとってすでに“気になる技術”から“活用を始める段階”へと移行しつつあります。ただし、生成AIの活用には目的やレベルに応じた“段階”が存在します。
ここでは、生成AI活用の3つのフェーズをご紹介します。
最も多くの企業が着手している段階です。
このフェーズでは、ChatGPT / GitHub Copilot / Google Gemini(旧Bard) / Microsoft Copilot / Notion AIなどのツールを使って、以下のようなアシスタント的活用が行われています。
目的は主に時間短縮やコスト削減、作業負荷の軽減です。
このレベルの導入は比較的ハードルが低く、すでに多くの現場で活用が進んでいます。
このフェーズから、生成AIは“個人の業務支援”から組織やプロダクトにおける“機能”の一部として使われ始めます。
この段階では、業務そのもののスピードや質が変わるだけでなく、部門をまたいだ活用や、社内ルール・ガイドラインの整備などが必要になります。「どこにどう組み込むと効果があるか」という設計的思考が求められるため、技術理解だけでなく体験設計・組織連携の視点が重要です。
ここが、生成AI活用の最前線です。
このフェーズでは、生成AIはツールではなく、プロダクトやサービスの中核にある“提供価値”そのものを再構築する要素として位置付けられます。
ここでは、単なる効率化ではなく、「生成AIだからこそ実現できる新しい価値とは何か」を問うフェーズになります。技術・体験・ビジネス戦略が融合する領域であり、最終的にはプロダクトやブランドの在り方自体を進化させる可能性を持っています。
たとえば、ゲーム開発の現場で生成AIを活用するケースを考えてみましょう。
フェーズ1では、個人のデザイナーやシナリオライターがChatGPTやGeminiなどを使い、キャラクター設定の草案やサブクエストのアイデアを出すといった“作業補助”として使われます。
フェーズ2になると、チームやプロジェクト単位で生成AIがワークフローに組み込まれ、テストプレイの自動化やプレイログ分析、開発初期のプロトタイプ生成などに活用されるようになります。
そしてフェーズ3では、生成AI自体をゲームのサービス設計やユーザー体験の中核要素として取り入れ、AIテスト機能を外部提供したり、AIキャラクターと共に物語を共創したりするような新たなUXを実現するケースが該当します。
本記事では、このフェーズ 2(プロセス統合)とフェーズ3(価値・体験設計)に焦点を当て、生成AIを単なるツールからビジネス変革の中核へと昇華させるための視点やアプローチを掘り下げていきます。
生成AIをプロダクトやサービスに“組み込む”という視点で活用する際、求められるのは単なる業務支援ではなく、ビジネス全体に対する戦略的なインパクトです。
ここでは、フェーズ2・3における生成AI活用の主なメリットを、5つの観点から整理します。
生成AIは、ユーザー一人ひとりのニーズや行動に応じてリアルタイムでパーソナライズされた体験を提供することが可能です。
たとえば、顧客対応の場面では、AIが過去の履歴や文脈を踏まえた回答を生成し、対話のなかで価値を届ける新しいUXを創出できます。
このような“顧客との会話設計”は、従来型の静的なコンテンツとは一線を画す体験価値を提供します。
生成AIを活用することで、初期アイデアを素早く形にして検証する「試行回数」を飛躍的に増やすことが可能になります。
マーケティング施策のコピー案、UIデザインのたたき台、プレゼン資料の構成、業務フローのシナリオ、ゲームのコンセプトデザインなど、さまざまな“ゼロイチの仮説づくり”を簡易的な試作品(プロトタイプ)として出力できるため、関係者間の認識合わせやディスカッションが素早く進みます。
このようなプロトタイピングのスピードアップは、検証と意思決定のサイクルを加速させ、結果として、開発・企画・設計といった上流工程の質と効率を同時に引き上げることができます。チーム全体の創造性も活性化し、より多くの案が現実の選択肢として展開されていくのが特徴です。
生成AIを単なる自動化ツールではなく、顧客やユーザーと“共に価値を生み出す存在”として設計することで、これまでにない新しい体験の創出が可能になります。
たとえば、以下のような例があります。
こうした「ユーザーに合わせて成長するような動的な体験」は、生成AIだからこそ可能なアプローチです。一方向の提供モデルから、参加型・対話型・共創型のサービスモデルへと進化するきっかけとなります。
生成AIを活用したプロダクトやサービスは、それ自体が話題性やSNS拡散力を持つことが多く、「生成AIと共にアイデアを創出したゲーム」「AIがストーリーを進化させるサービス」など、技術とアイデアの融合が注目されやすい傾向があります。
これは、新規サービスのリリース時やキャンペーン時における広報資源としても非常に効果的です。
生成AIの扱い方そのものが、企業の姿勢や未来志向を映す鏡になります。
ただAIを“効率化の道具”として使うのではなく、新しい価値として組み込む姿勢は、社外に対して「先進的で柔軟な企業」であるという印象を与えるだけでなく、社内のイノベーション文化醸成にもつながります。
生成AIはすでに多様な業界で実用フェーズに入り、プロダクトやサービスの“中核”に組み込まれるかたちで活用が進んでいます。
ここでは、フェーズ2〜3に該当する代表的な活用事例を4つご紹介します。
NVIDIAは、ゲーム開発における生成AIの活用を進めており、特にNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の会話や動作の生成に焦点を当てています。同社のゲーム開発者向けプラットフォーム「NVIDIA ACE for Games」は、NPCの自然言語処理や音声認識、表情アニメーションを実現するためのAIモデルを提供しています。これにより、ゲーム内のキャラクターがよりリアルでダイナミックな反応を示すことが可能となり、プレイヤーの没入感を高めています。
また、NVIDIAの「Omniverse」プラットフォームは、3Dコンテンツの生成や編集を支援するツールを提供しており、ゲーム開発者が効率的に高品質なビジュアルを作成できるようサポートしています。これらの技術は、ゲーム開発の工数削減と品質向上の両立を実現しています。
アパレル大手H&Mでは、生成AIを活用したチャットボットを導入し、顧客対応の効率化とサービス向上を実現しています。商品検索、在庫確認、注文状況の問い合わせなど、多様な顧客の質問に対してリアルタイに応答することで、カスタマーサポートの負荷軽減と対応スピードの向上に貢献しています。
また、AIによってユーザーの嗜好や過去の行動をもとに、パーソナライズされた提案や応答を行う機能も搭載されつつあり、今後の顧客体験(CX)向上においても、生成AIの可能性が期待されています。
3DファッションのパイオニアであるThe Fabricantは、AIを活用したデジタル衣服のデザイン自動化に取り組んでいます。
同社が開発・提供している「Sketch-to-Image」ツールでは、手描きのスケッチをAIがリアルなデジタル衣服画像に即座に変換。これにより、デザイナーは大量のビジュアルバリエーションを短時間で生み出すことができ、創作の初期フェーズにおけるスピードと多様性の両立を実現しています。
The FabricantのAI生成には、GAN(Generative Adversarial Networks:敵対的生成ネットワーク)と呼ばれる技術が活用されています。GANは「生成モデル」と「識別モデル」が競い合うことで、リアルに近い画像やパターンを高精度に生成できる技術で、デジタルファッションのようにビジュアルの質が重視される領域において非常に有効です。
同社のAIツールは、The Fabricant社内でのデザインプロセスにも活用される一方で、外部向けプラットフォーム(例:The Fabricant Studio)としても提供されています。これにより、外部のユーザーやデザイナーも、AIと共に衣服デザインを共創する体験が可能となっています。
教育テック企業Scribeでは、生成AI(GPT系)を活用した学習支援ツールを展開しており、教師の情報をもとにステップバイステップの学習ガイドや説明文を自動生成する機能を提供しています。これにより、個々の生徒に合わせた教材づくりが効率化され、教育のパーソナライズ化に寄与しています。
なお、同社のAI基盤にはGPT技術が用いられているとされていますが、教育現場での本格的な導入事例については、今後の展開に注目が集まっています。
当社AIQVE ONEが提供するPlayable!は、生成AIを活用したゲームテスト自動化ソリューションです。
最大の特長は、LLM(大規模言語モデル)や画像生成AI技術を活用し、自然言語による高度なテスト自動化ができる点です。日本語で指示を出せるため、専門知識がなくても簡単にテストを自動化できます。QAエンジニア1人が、100台規模のAIエージェントに対して多様なテストケースを一括で指示・実行させ、その結果を一元的に受け取るといった運用も可能です。
このように、活用方法次第で、ゲームQAの工程におけるスケーラビリティと柔軟性を飛躍的に高めることができます。
生成AIの活用は、PoC(概念実証)から先に進めず止まってしまうケースも少なくありません。
ここでは、アイデアや目的を“本格導入”につなげるための実践的なステップをご紹介します。
特にフェーズ2・3での活用を見据える場合、事前設計とデータ整備、ツール選定、運用体制の構築が鍵となります。
まずは、生成AI導入の目的と期待する成果を明確にするところから始めます。
「何をどのように改善・強化したいのか」「KPIやゴールは何か」を具体化し、生成AIの適用範囲や役割を定義します。
想定しているユースケースがAIで実現可能かどうか、初期段階でエンジニアに確認しておくと、後工程のムダを防げます。 |
生成AIは学習データをもとに出力内容を生成します。そのため、目的に応じた高品質なデータの準備が、精度の高い活用につながります。
データソースには主に以下の3タイプがあります。
① 自社データの活用
もっとも多くの企業が採用するパターンです。社内に蓄積された業務・顧客関連のデータを活用し、生成AIのカスタマイズやコンテンツ生成に活かします。
例: 大手Eコマース企業が過去の顧客レビューや商品説明文を基に、生成AIを使って新しい説明文を自動生成する際には、自社データを用意します。
② 既存の学習済みモデルを利用
ChatGPTやDALL·Eなど、すでに大規模データで学習されたモデルをそのまま活用する方法です。初期学習の負担がなく、すぐに導入できるのが利点です。
例:多くの企業がOpenAIのAPIを組み込み、FAQ対応や記事生成などに活用しています。
③ 外部データの活用
社外の公開データや、パートナーから提供される専門データを組み合わせることで、生成の質や幅を広げることができます。
・公開データセット:科学論文や統計データなどのオープンソース情報を活用
・第三者データ:業界特化の有料データや、提携先のナレッジベースを統合
例:教育系企業が公開された教育資料データセットを使って、学習者ごとの説明コンテンツを自動生成する取り組みも進んでいます。
データの収集・整形・変換作業には技術的な複雑さが伴うため、エンジニアやデータサイエンティストの支援が必要になるケースが一般的です。 |
生成AIを導入するにあたっては、目的や課題に応じて最適な技術やツールを選定するプロセスが極めて重要です。
生成する対象(テキスト、画像、音声など)によって必要なAIの仕組みは異なるため、 あらかじめ用途ごとの技術的特徴を理解しておくことが、成功の鍵となります。
以下に、主な生成対象別のAI技術と特徴を整理した表を掲載します。
生成対象 | 主な技術 | 主な用途例 | 特徴・補足 |
テキスト | GPT系(例:GPT-4 / Claude) | 会話生成、記事作成、要約、コード生成など | 汎用性が高く、自然言語処理に特化 |
画像 | GAN(例:StyleGAN) | ファッションデザイン、背景生成 | 高品質な画像を生成。訓練データに敏感 |
画像+テキスト | Diffusion系(例:Stable Diffusion) | テキストからの画像生成(プロンプト→画像) | イメージを言語で指定して多様な画像を生成可能 |
音声 | TTS(Text-to-Speech)や音声生成モデル(例:VALL-E / ElevenLabs) | ナレーション生成、会話音声の合成 | 感情や声色をリアルに表現可能 |
動画 | Runway ML / Pika Labs など) | ショート動画生成、アニメーション試作 | 開発途上領域。まだ学習コストが高い |
このように、生成AIと一口にいっても、実現したい機能や出力内容に応じて技術選定の視点は大きく異なります。さらに、以下のような観点も合わせて検討することが重要です。
この工程では、ツールやプラットフォームの技術的適合性やAPI統合の可否を判断する必要があり、エンジニアの視点が不可欠です。特に、事前検証やPoC段階での技術選定が導入成否に直結します。 |
ツールを選定したら、次は「実際に使ってみる」段階です。
このステップでは、本番導入の前にAIモデルを学習させ、テスト環境で挙動や精度を確認します。
このステップでは、AIモデル開発に関するエンジニアの深い知見が重要になります。 |
テストで成果が確認できたら、生成AIを実際の業務やサービスに統合していくフェーズに入ります。
導入先は大きく分けて2つのタイプがあります。
【1】既存業務への組み込み(業務プロセスの高度化)
【2】新規プロダクト・サービスへの組み込み
このステップでは、システム連携(API実装・UI連動・出力の自動反映など)において、エンジニアの技術的支援が不可欠です。社内外のデータ基盤や既存システムと統合する際の設計が、品質と運用安定性に直結します。 |
運用後も、AIの出力内容やユーザーからのフィードバックをもとに、定期的に評価・改善を行います。組織内における継続改善サイクルを回す体制づくりがカギとなります。
この段階では、再学習や最適化の実行、継続モニタリングの体制設計において、エンジニアによる伴走が非常に有効です。 |
生成AIの導入は大きな可能性を秘めていますが、同時に見落としがちなリスクや限界も存在します。導入の効果を最大化するために、以下の観点から注意点を把握しておくことが重要です。
生成AIの出力は入力データに大きく依存します。
もし学習データに偏りや誤りが含まれていると、生成物にもバイアスや不正確な情報が反映されてしまいます。特に社内データを使う場合は、「誰が」「どんなルールで」データを整備したかを確認し、品質を担保することが必要です。
生成AIが出力するコンテンツには、差別的・攻撃的な表現が含まれてしまうリスクがあります。また、AIが生成した内容を人間の責任でどう扱うかという点で、説明責任や透明性の確保が問われます。社内での利用ポリシーの策定や、従業員への倫理教育も検討すべきポイントです。
生成AIが出力した画像・文章・コードなどの成果物には、著作権・商標・肖像権などの権利侵害リスクが伴うことがあります。特に学習データの出典が不明な場合や、既存作品に酷似したコンテンツを生成する場合には注意が必要です。
商用利用を検討している場合は、利用規約や法的ガイドラインの確認が不可欠です。
【関連記事】著作権はどうなる?生成AIの課題と、活用する際の注意点を解説
AIに入力したデータが外部のサーバーに送られる場合、情報漏洩リスクがあります。
たとえば、以下のようなリスクがあります。
リスクの種類 | よくあるケース | 対策の方向性 |
入力による漏洩 | 社内資料をAIに貼り付け | 社内ポリシー明記、データ匿名化 |
出力による漏洩 | 他人の情報が回答に含まれる | 出力監視、フィルタ機能の実装 |
システム接続時の脆弱性 | API経由で全データにアクセス可能 | アクセス権管理、エンジニアとの設計調整 |
クラウドAIの規約誤解 | 学習に使われると知らずに利用 | ツールごとのポリシー確認、契約条件の整理 |
個人情報・機密情報を取り扱う場面では、クラウドAIの利用範囲や保存ルールの明確化が必要です。プライバシー保護の観点からは、匿名化や利用目的の明示なども重要です。
生成AIは万能ではなく、「事実誤認」「意味の曖昧さ」「同じような表現の繰り返し」など、 出力に対する細かなチューニングや人間の介入がまだ必要です。
特に高精度が求められる業務では、人によるレビュー体制の整備が前提になります。
API利用料やクラウド費用、インフラ整備、PoCの工数など、目に見えないコストがかさむこともあります。導入前には、費用対効果(ROI)をシミュレーションし、成果が見込めるポイントから段階的に進めることが現実的です。
生成AI導入には、技術選定・導入設計・社内教育・継続運用といった多岐にわたる対応が必要です。IT部門やエンジニアのリソースが不足していると、導入が滞る・属人化するというリスクも。専門人材の確保や、外部パートナーの活用も視野に入れて体制を整えておくと安心です。
生成AIは、単なる業務効率化にとどまらず、ビジネスやサービスそのものを変革する可能性を秘めた技術です。本記事では、フェーズごとの活用段階から導入の実践ステップ、成功事例、注意点までを包括的にご紹介しました。
導入にあたっては、明確な目的設定と段階的な実装、そして技術だけでなく“体験設計”の視点が鍵になります。
生成AIを「業務支援ツール」としてではなく、「新しい価値を共創する存在」としてどう活かすかという点に向き合うことが、これからのビジネスに求められる視座となるでしょう。
本記事でご紹介したように、生成AIの本格活用には戦略設計・データ整備・技術選定・社内体制構築まで、さまざまなハードルがあります。AIQVE ONEでは、生成AIを活用したプロダクト開発支援・PoC伴走・プロンプト設計・運用体制の設計支援など、AI活用の検討、導入から実装までを一貫してサポートしています。
「社内にナレッジがなくて困っている」「とにかくどこから始めれば…」という方も安心してご相談いただけます。
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