CASE

AIQVE ONE株式会社のテストを導入していただいた企業のご担当者にお話を聞く事例紹介インタビューをご紹介します。

インディーゲームがテストを
受ける、そのきっかけを
作っていきたい

スケルトンクルースタジオ

インディーゲーム『Olija』の開発を行う株式会社スケルトンクルースタジオを訪問。代表取締役社長の村上雅彦氏と開発者のThomas Olsson氏にお話を伺いました。

お取引概要

『Olija』にてインディーゲーム支援テストを実施。

当初の課題

インディーゲームは開発者同士がお互いにゲームを遊び合う文化が根強く、また少人数開発ならではの事情もあり、外部にテストを依頼する機会がほとんどなかった。
そのため、社内にきちんとした品質管理の環境が無く、外部委託する場合もどの会社に相談していいかわからなかった。

インタビューイー

・村上 雅彦 氏 / 代表取締役社長

・Thomas Olsson 氏 / 『Olija』開発者

相談先すら分からない…。少人数ならではの課題を抱えた、インディーゲーム特有のテスト事情

御社は『Olija』※の制作や日本最大級であるインディーゲームの祭典、「BitSummit」の運営など、インディーゲームに深く関わっていらっしゃいます。この業界では、ゲームのテストはどのように行われるのでしょうか。

※『Olija』とは
Olijaの発売日が2021年1月28日に決まりました。
https://olija.com/
https://youtu.be/gXNbXZ8SNhU
主人公が様々な冒険を乗り越えながら、島からの脱出を目指す横スクロールアクションADV。作り込まれたピクセルアートと、不思議な銛(もり)を用いたスピード感あふれる操作性が特徴。開発者のThomas氏から見たアジアが世界観のベースとなっている。

村上氏 インディーゲームの大半は、少人数のチームで開発されます。そういった規模の面もあり、インディーゲームを作っている会社は中々、大手の会社さんにテストを依頼しにくいというのが本音ではないでしょうか。そのため、インディーゲームは開発者がお互いに遊びあって、それぞれフィードバックするのが一般的です。

Thomas氏 また、大手の会社さんにテストを依頼した場合、やりとり自体が忙しくなって肝心のゲーム制作が進まないという、少人数ならではの問題があります。一般的なタイトルであれば、ディレクターやプランナーに当たる方がバグの優先度をジャッジして進行すると思うのですが、少人数開発だとそこに工数をかけることが難しいです。

村上氏 パブリッシャーが絡むタイトルであれば、そこがテスト会社を指定し窓口まで担ってくれるため、こうした心配は無くなります。ですが『Olija』のように自社だけで制作しているタイトルの場合、AIQVE ONEさんと出会うまで、どこに相談すれば良いかさえ分からない状態でした。

AIQVE ONEの「インディーゲーム支援テスト」が、初めてテストを受ける切っ掛けになった

なるほど。インディーゲームならではの課題があったのですね。そういった事情を抱える中、AIQVE ONEの京都ラボに在籍するExpert Debugging Team (EDT)※とは、どのような経緯で出会ったのですか?

※Expert Debugging Team(EDT)
AIQVE ONEの京都ラボに在籍する少数精鋭のテスター集団。バグ検出の発想力と検証能力に優れ、所属するためには合格率約27%の実技試験をクリアする必要がある。

村上氏 弊社は「BitSummit」の運営に関わっており、私は理事の一人を務めています。先ほどお話した通り、インディーゲームを作る会社が外部にテストを依頼することは稀であり、BitSummitに出展されるタイトルは未完成な状態であることが常でした。
そんな折、AIQVE ONEさんから、「インディーゲーム支援テストという形でゲームの開発を手伝いたい」とご提案頂いたのです。私自身はゲームのテストや品質管理は重要だと前々から考えており、またプロがどのような手順でテストを行うのか非常に興味があったので、自社で開発を進めていた『Olija』を見てもらうことにしました。

詳細な報告を受けて、バグに対する意識が変化した

実際にテストを受けた感想を教えてください。

村上氏 限られた短い期間の中で、数多くのバグ情報を出して頂き満足しています。そもそも『Olija』はThomasが一人で作っており、バグ検出を目的としたテストは今回が初めてでした。これまではどうしても、「バグに気付けない」という課題がなかなか解決できなくて…。

Thomas氏 私を含めて、インディーゲームの開発者は1人でゲームを作っていると、なかなか問題に気付けないことが多いと思います。テストとゲーム開発の平行作業は、非常に難しいことですから。

村上氏 今回はゲームの開発中にテストをしていただき、一部バグなのか仕様なのかハッキリしない箇所があったものの、そういった部分までプロの方から連絡をもらえたのは良かったですね。

Thomas氏 送ってもらった報告、そのひとつひとつが詳細でとても驚きました。中には「こんな問題があるかも」と可能性に言及する内容もあり、ただただ凄いなと。

今回テストを担当させていただいた京都ラボのEDTに対して全体を通した評価と、今後期待したいことを教えてください。

Thomas氏 私の作品でテストを本格的に行ったのは、『Olija』が始めてでした。今回の体験でバグに対する意識が変わったのが、凄く良かったと思います。

村上氏 期待することとしては、検出されたバグ情報を「これは緊急性が高い」「これは仕様なのでは」といった具合に、開発の内側にまで入って整理してくれるサービスまであると嬉しいかなと思います。インディーゲームにパブリッシャーが付く利点のひとつが、まさにそこなんですね。間に入ってくれる方がいると、バグに関するやりとりがスムーズになり、開発者もゲーム制作に集中出来るので。

“直す”のではなく、“より良くする”。そのマインドでテストがインディーゲーム全体に広がってほしい

インディーゲームには今後、どのようなテストが求められるのでしょうか。

村上氏 以前大きな会社で働いていたので、私自身は「テストは当然行うもの」という認識を持っていますが、インディーゲーム界隈はテストの価値にピンと来ていない方が大半かと思います。

Thomas氏 友達などの近しいコミュニティでお互いに遊び、気付いたことを報告しあうという文化が根強いですね。テストはプロに頼んだほうが良いのは間違いないし、クオリティも上がります。ただし、どうしてもコストの問題がクリアできないチームがほとんどでしょう。

村上氏 コストの面で言えば、一人で頑張っている開発者が相談しやすいようなプランがあると凄くありがたいですね。私はテストもゲーム開発のひとつだと思っており、そういった考えを持つ人がもっと増えればなと。BitSummitとしても、今後ともAIQVE ONEさんのようなテスト会社と、取り組みを続けたいと考えています。

なるほど。インディーゲームとしてはどのようなテストが理想ですか?

村上氏 少し曖昧な表現になりますが、インディーゲームにはバグとはいえない、制作者のクセや手作り感が残るんですね。私はそれが嫌いではなく、そういったものまで一概に綺麗にすれば良いとは思っていません。

Thomas氏 インディーの世界は凄くカジュアルですし、それがとても大事なのです。

村上氏 もちろん程度の問題であり、クライアントワークの場合は製品としてしっかり作り上げることが重要ではあるものの、そういった余地が残ってもいいのかなと思っています。
テスト=バグを無くすことと捉えられがちですが、それだけではなくて、ユーザーがそのゲームをより良く体験するためのお手伝いとも言えます。“直す”のではなくて、“より良くする”。そんな考えも含めて、テストという文化がもう少しインディーゲームに浸透すれば良いなとは思っていますね。

※「インディーゲーム支援テスト」は現時点ではその年のBitSummitのエントリーを通過された日本在住の方々を対象として実施しています。