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『ネット特定班』はどうやってターゲットを特定するのか?個人情報の漏洩リスクを解説

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こんにちは。セキュリティサービス本部の宮内です。 

気付けばもう3月。学生の皆さんは卒業や入学、社会人の皆さんは部署異動や転職、新卒入社など、新生活の準備に忙しい時期ですね。引っ越しをする方も多いのではないでしょうか? 

そんな新生活では、SNSやブログなどで日々の出来事を発信する機会も増えるかもしれません。しかし、何気ない投稿が思わぬ危険を招くことも…。今回は、インターネット上での情報発信がキッカケで個人がどのように特定されるのか、そのリスクについてお話しします。 

増加する個人情報漏洩の件数

近年、個人情報の漏洩や紛失事件が頻繁に報じられるようになりました。 
東京商工リサーチによると、2023年に日本国内で漏洩した個人情報は約4,090万人に上るとされています。これだけの人数が情報流出の影響を受けているとなると、個人情報が漏洩していない人はいないのではないかと感じてしまうほどの規模です。 

また、企業規模別では、東証プライム企業からの流出が7割以上を占めており、上場企業のサービス利用者が多いことが原因の一つと考えられます。 

出典:東京商工リサーチ 

個人情報はどうやって入手されるのか?

個人情報を手に入れる方法には、探偵を使うといった手段もありますが、現代ではインターネットを利用するのが一般的です。その中でも特に問題なのが「名簿」の存在です。 

実は、世の中には「名簿業者」というものがあり、個人の名前・住所・電話番号・メールアドレスなどの情報が普通に売買されています。驚くことに、これは違法ではありません。まるで映画やドラマのような話ですが、現実に起きていることなのです。 

本来、個人情報は個人情報保護法によって本人の同意なしに第三者へ渡ることは禁じられています。しかし、実際にはさまざまな理由で情報が流出しており、お金さえ払えば個人でも購入できるのが現状です。 

もしかすると、この記事を書いている私の情報も、読んでいるあなたの情報も、既にどこかで売られているかもしれません。 

現代社会では、多くのサービスを利用するために個人情報の提供が求められます。そのため、自分で情報流出を完全に防ぐことは非常に難しいのが実情です。 

名簿情報は、企業による営業やマーケティングに活用されるのが一般的ですが、犯罪行為に悪用されるケースも少なくありません。 たとえば、近年問題になっている「闇バイト」のターゲットも、こうした個人情報をもとに選ばれている可能性があります。 

そこで本記事では、インターネット上で個人情報を発信するリスクを解説し、皆さんが犯罪に巻き込まれないようにするための対策を紹介していきます。 

「SNSや配信活動で個人情報を発信していないから大丈夫!」と思っている方も要注意。知らないうちに情報が特定される危険性があるのです。 

個人はどのように特定されるのか? 

近年、SNS上での「炎上」事件が後を絶ちません。たとえば、飲食店で調味料をいたずらしたり、アルバイト中に不適切な行動をとった様子をSNSに投稿したりするケースです。こうした行為が発覚すると、投稿者の氏名、通っている学校、勤務先などの個人情報が一気に拡散され、損害賠償を請求されたり、学校を退学になったりと、重大な影響を受けることになります。 

このようなトラブルを避けるためにも、モラルを守った行動を心がけましょう。 

では、「特定班」と呼ばれる人たちは、どのようにして個人を特定しているのでしょうか? 実は、特定のほとんどがインターネットを駆使した手法によって行われています。以下では、その具体的な方法について解説していきます。 

【SNSアカウントからの特定】 

最も一般的な特定方法は、投稿者本人のSNSアカウントを確認することです。 

SNSには、通っている学校、住んでいる地域、本名など、個人を特定できる情報が無意識のうちに投稿されていることが多く、それが手がかりになります。 

たとえば、住んでいる地域をプロフィールや投稿で公開している場合、飲食店でのいたずら動画を投稿すると、店名を明かしていなくても特定される可能性があります。その地域にある飲食店をカテゴリ(居酒屋、ファミレス、回転寿司など)ごとに絞り込めば、候補はすぐに狭まるからです。 

炎上に気づいた後、アカウントを削除したり非公開にする人もいますが、その時点ですでにスクリーンショットが拡散されている可能性が高いため、削除しても手遅れになることがほとんどです。 

【フォロワーとのやり取りからの特定】 

SNSでは、リアルの友人や知人とつながっていることが多いため、投稿者本人の情報がなくても特定される可能性があります。 

たとえば、投稿者のフォロワーが「明日のテスト勉強してる?」とコメントした場合、投稿者とフォロワーが同じ学校に通っている可能性が高いと推測できます。さらに、フォロワーのプロフィールに学校名が書かれていれば、投稿者自身は学校名を公開していなくても、やり取りを通じて特定されてしまうのです。 

このように、SNS上でのフォロー・フォロワーの関係や会話の内容から、投稿者の個人情報が間接的に特定されることがあるため、注意が必要です。

【知人によるリーク】  

炎上が起こると、投稿された写真や動画だけでは特定できなくても、知人が情報を暴露するケースがあります。 

暴露の動機はさまざまで、恨みや仕返し、あるいは単なる面白半分といった理由で拡散されることも少なくありません。 

「昨日の友は今日の敵」という言葉があるように、普段は仲の良い相手でも、何かのきっかけで情報を漏らされる可能性があります。 そのため、日頃から周囲との関係を良好に保つことも大切です。 

【その他の外部情報からの特定】 

同じ名前やプロフィール画像を使い回している場合、画像検索などを利用して、他のSNSアカウントを特定されることがあります。 

一つのアカウントだけでは特定が難しくても、別のSNSで公開している情報と照らし合わせることで、個人情報が明らかになるケースもあるため注意が必要です。 

SNSに潜むもう一つの危険性

ここまで、炎上による個人特定のリスクを紹介しましたが、SNSには別の危険も潜んでいます。 
それは、空き巣や強盗、ストーカーなどの犯罪につながるリスクです。 

新生活が始まるこの時期、何気なく投稿した写真や動画から個人が特定される危険性について、改めて考えてみましょう。 

【何気ない投稿が危険に?】 

「今日は○○線が遅延していて遅刻する」 
「雨が降ってきた」 
「近所に新しく○○ができるらしい」 
「選挙で○○って候補者がずっと演説している」 

このような何気ない投稿をしている人は多いのではないでしょうか? 

一見、特定されるような情報には思えませんが、実は少しずつ情報を積み重ねることで、住んでいるエリアや最寄り駅、通勤・通学時間が特定されてしまうことがあります。 

たとえば、 

  • 「○○線が遅延して遅刻する」 → 普段利用している路線が判明 
  • 「近所に○○ができる」 → 住んでいる地域が絞り込まれる 
  • 「雨が降ってきた」 → 投稿時間と天気情報を照らし合わせれば、さらにエリアが特定される 

さらに、過去に自身の顔写真を投稿したことがあると、これらの情報と組み合わせて、最終的には「誰が」「どこに住んでいるのか」まで特定される可能性があります。 

また、住所が特定されている状態で 
「明日から1週間出張!」 
などと投稿すれば、空き巣に狙われるリスクも高まります。 

【部屋の写真から住所が特定される危険性】 

引っ越し直後などに、新居の写真をSNSに投稿する人は少なくありません。 
しかし、その写真が原因で住所を特定されるリスクがあることをご存じでしょうか? 

例えば、家具がまだ何も置かれていない状態の写真を投稿すると、画像検索で不動産会社の物件紹介ページがヒットし、そこから住所が特定される可能性があります。 

また、部屋の間取りや内装が特徴的な場合、同じ物件に住んでいる(住んでいた)人にはすぐに分かってしまうこともあります。 

さらに、カーテンをつけずに撮影した写真を投稿すると、窓から見える景色を手がかりに住居を特定される危険性も。 

部屋の写真をSNSに投稿する際は、個人情報が漏れるリスクを十分に理解し、慎重に判断することが大切です。 

【マンホールや自動販売機から住所が特定される危険性】 

「家の近所を散歩中!」と写真付きでSNSに投稿する人も多いですが、写真にマンホールや自動販売機が写り込むと、住所が特定される可能性があります。 

・マンホールの識別番号 

マンホールには「マンホール識別番号」というものがあり、これを調べると設置されている正確な住所が簡単にわかってしまいます。 

・自動販売機の住所表記 

また、2005年以降に設置された屋外の自動販売機には、社会インフラとしての役割から住所が記載されています。 
これは、近くで人が倒れた際などに正確な位置を伝えられるようにするためのものですが、写真に写り込んでしまうことで、自宅の場所を特定されるリスクにもつながります。 

何気なく撮った写真でも、特定される手がかりになる可能性があるため、投稿前に慎重にチェックすることが大切です。 

【眼球の反射から住所が特定されるリスク】 

近年、スマートフォンのカメラの画質は非常に高く、目に映ったものまで識別できるほど精細です。 

実際に日本で起きた事件では、アイドル活動をしている女性が最寄り駅で撮影した写真をSNSに投稿し、それを見た人物が女性の眼球に映った背景を拡大し、その駅を特定しました。 
さらに、その女性が投稿していた部屋の写真からカーテンの位置や光の入り方を分析し、自宅を特定。 
結果として、女性はわいせつ行為を受け、加害者は起訴される事態にまで発展しました。 

このように、本人が何気なく投稿した写真でも、意図せず事件に巻き込まれるリスクがあることを覚えておくべきです。 

【花火の動画から位置が特定されるリスク】 

「そんなことで?」と思うかもしれませんが、夏になると花火大会で花火の動画を撮影してSNSに投稿する人も増えます。 
実は、この花火の動画からでも、撮影者の位置が特定されることがあります。 

例えば、花火の音が聞こえてからの時間差を使って、撮影者の位置をおおよそ特定することができます。 
さらに、動画に映っている景色や方角から、どこで撮影されたかを絞り込むことも可能です。 

このリスクを避けるためには、花火の音を編集して消したり、景色がわからないように工夫をすることが有効です。 
ちょっとした工夫で、位置を特定されるリスクを減らすことができます。 

まとめ

炎上は年齢に関係なく誰にでも起こり得る問題です。 
何気ない一言が思わぬ形で炎上につながることもあります。 
SNSを利用する際は、発言が常識的で、他人を傷つけていないかを意識することが重要です。 

また、現代ではGoogleマップなどのインターネットツールを使って、誰でも個人情報を簡単に集められる時代です。 
そのため、配信活動をしていない人でもSNSを利用しているだけで個人情報を特定される危険性があります。 
「自分は大丈夫」と思い込んでいると、悪意を持った人物に情報を見られ、思わぬリスクに巻き込まれる可能性もあるので注意が必要です。 

SNSを利用する際は、常に自分の情報が他人にどう見えるかを意識して投稿することが大切です。 

この記事の監修者 宮内 翔太
セキュリティサービス本部

2014年に新卒でIT企業に就職後、データセンターや大手通信会社で運用・保守の仕事に従事。その後はテストエンジニアとなり、数年の時を経て2019年にサイバーセキュリティ領域に転身。省庁案件やSOCアナリスト(サイバーセキュリティ監視)業務、セキュリティ教育業務を経て現職。ゼロからサイバーセキュリティについて知ってもらい、人材育成を行えるよう学習及びコンテンツ作成に従事している。

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