
サイバーセキュリティ
『ネット特定班』はどうやってターゲットを特定するのか?個人情報の漏洩リスクを解説
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近年、サイバー攻撃の標的は大企業に限らず、中小企業にも広がっています。しかし、中小企業社員の約7割が「勤務先の情報セキュリティは不十分」と感じているという調査結果が示すように、十分な対策が取られていない企業も少なくありません(※出典元:株式会社テノクルによる調査 )。とはいえ、何から始めればよいのかわからない企業も多いでしょう。本記事では、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が提供するガイドラインをもとに、中小企業がまず取り組むべき情報セキュリティ対策を解説します。
昨今、中小企業が直面するセキュリティリスクには、主に次のようなものがあります。
中小企業において情報セキュリティ対策が遅れる主な要因の一つは、IT専任担当者の不在です。多くの企業では、総務や経理の担当者がIT管理を兼務しており、専門的な知識が不足しているため、適切な対策が取れないケースが多く見られます。また、コストや人材リソースの制約により、高度なセキュリティ対策の導入が難しいという現実もあります。
さらに、セキュリティ対策の優先順位の低さも問題です。売上向上や業務効率化が優先され、情報セキュリティはどうしても後回しになりがちです。特に、「ウイルス対策ソフトを導入すれば十分」という誤解が広がっており、データのバックアップやアクセス管理の強化、従業員教育などが軽視される傾向があります。しかし適切な対策を怠ると、サイバー攻撃による情報漏えいや業務停止といったリスクが高まり、結果的に企業の信頼や収益に大きな影響を及ぼしかねません。
実は中小企業は、大企業よりもサイバー攻撃の標的となることが多いということをご存知でしょうか。これは、多くの中小企業がファイアウォールやEDR(エンドポイント検知・対応)などの高度なセキュリティ対策を導入していないため、攻撃を防ぐ壁が低いためです。ランサムウェアの被害を受けている企業の約6割が中小企業というデータも報告されています。 攻撃者にとっては、厳重な防御が施された大企業よりも、比較的容易に侵入できる中小企業の方が、手間をかけずに攻撃を成功させやすいのです。
また、中小企業が標的になる理由のひとつに、「踏み台」として利用されることも挙げられます。これは、取引先の大企業へのサイバー攻撃の足掛かりとして、中小企業が悪用されるケースを指します。たとえば、攻撃者が中小企業のPCやシステムにマルウェアを仕込み、その企業を経由して取引先の大企業に感染を広げる「サプライチェーン攻撃」がその典型です。このように、中小企業は直接的な被害を受けるだけでなく、取引先にまで影響を及ぼすリスクを抱えているため、早急なセキュリティ対策が求められます。
中小企業における情報セキュリティ教育の不足や、社員の意識のばらつきが、サイバー攻撃のリスクを高めています。特に、標的型攻撃メールに対する認識不足が課題の一つです。取引先を装ったフィッシングメールや、経理部長になりすました振込指示メールなど、見分けが難しい手口が増えており、実際に経理担当者が誤って数百万円を詐欺グループに送金してしまう事例も発生しています。最近ではこれらに加え、VPNやクラウドサービスの設定ミスを狙う攻撃や、ソーシャルエンジニアリング(人間の心理を突く攻撃)が増えています。 たとえば、VPNのパスワードを使い回す、多要素認証(MFA)を設定しない、クラウドの共有設定を誤るといった小さなミスが、企業のセキュリティリスクを高める要因になります。また、リモートワーク環境の拡大に伴い、VPN機器の脆弱性を利用され、ランサムウェア感染被害に遭うケースが増加しています。社員が公衆Wi-Fiを利用したり、私用PCで業務を行ったりすることでも感染リスクが高まっています。
こうしたリスクを軽減するためには、社員への適切なセキュリティ教育が欠かせません。 しかし多くの企業では、セキュリティ研修が未実施、あるいは形骸化しているのが実情です。たとえ実施していても、基本的な知識の習得にとどまり、実際の攻撃を想定した実践的な対策が浸透していないケースが少なくありません。
IPA(情報処理推進機構)が策定した「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、公的な指針として信頼性の高いガイドラインです。特に、「何をすればいいのかわからない」と悩む中小企業に向けて、具体的な対策を示しており、実践しやすい内容になっています。
このガイドラインは無料で公開されており、誰でも活用可能です。内容は「経営者編」「実践編」「付録」の3つで構成されており、それぞれの立場や目的に応じた対策を学べるようになっています。企業の情報セキュリティ対策を強化するために、まずはこのガイドラインの存在を知り、活用を検討することが重要です。
それでは、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を踏まえた上で、中小企業が実践すべきセキュリティ対策を解説していきます。
まず取り組むべき基本的な対策は以下の通りです。
「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」内にある「情報セキュリティ5か条」は、中小企業が最初に取り組むべき基本的な対策として推奨されています。その内容は以下の5つです。
これらを組織的に実践するために、以下の具体的な施策を導入すると効果的です。
① ウイルス対策ソフトを導入・更新を徹底
まだ導入していない企業はまずウイルス対策ソフトの導入を優先し、既に導入済みの場合は「常に最新の状態を維持する」ことを従業員に周知する必要があります。
② OS・ソフトウェアの更新を徹底
「更新を後回しにしない」「手動で停止しない」といった基本ルールを作成し、全従業員に通知することが重要です。また、IT管理者が定期的に全社の更新状況を確認し、適用漏れがないよう管理することが求められます。
③パスワード管理の強化
全社員に対し、「パスワードの使い回しを禁止」「長く・複雑なパスワードを設定する」といったルールを周知することが重要です。さらに、パスワードマネージャーの導入を検討し、安全な管理環境を整備することで、より強固な対策を実現できます。
④ 共有設定の見直し
社内ネットワークやクラウドフォルダのアクセス権を適切に管理し、不必要な権限を制限することで、情報漏えいリスクを低減できます。また、Wi-Fiのパスワード管理や、ゲストネットワークの制御についても定期的に見直しを行いましょう。
⑤なりすましメール・標的型攻撃対策
フィッシング詐欺や偽メールへの対策として、チェックリストを作成し社内で共有することが有効です。また、疑似攻撃メールを活用した訓練を定期的に実施し、社員が不審なメールを見抜く力を養うことも推奨されます。
「情報セキュリティ5か条」を実践した後は、次のステップとして同じくガイドラインの付録にある「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を活用し、より詳細に自社のリスクを可視化することが重要です。
25の設問に答えるだけで自社のセキュリティ対策状況を把握できます。採点方式は以下のように設定されており、優先的に改善すべきポイントが明確になります。
この診断は、経営者や情報システム担当者が主導し、各部門の実施状況を集計することで、より正確な診断が可能になります。
診断後は、結果をもとに、スコアが低い項目(0点・2点)を優先して改善策を検討することが必要です。また、「わからない」項目が多い場合、社内全体のセキュリティ意識が低い可能性があるため、教育やルール整備の強化を優先的に進めたほうがいいでしょう。
診断結果を活用し、次のステップとして無料でできる対策やセキュリティ教育へと進めば、より強固なセキュリティ対策を構築することができます。
基本的な対策が一通りできたら、より高度な取り組みもしていきましょう。たとえば、以下のような取り組みがあります。
セキュリティ対策は、一度導入して終わりではなく、組織として継続的に運用・改善できる体制を構築することが重要です。そのためには、単に対策を実施するだけでなく、「管理体制の構築」を重視し、組織として適切に運用し続ける仕組みを作る必要があります。
具体的なアクションとして、以下のステップを意識すると効果的です。
企業の規模や業務内容に応じたセキュリティ対策の指針を明確にする。
組織内で情報セキュリティを管理する担当者を決め、運用の主体を持たせる。
内部リソースだけで対応が難しい場合は、専門家の支援を受けることで適切な対策を講じる。
定期的にセキュリティ対策を見直し、最新の脅威や企業の変化に対応できるよう調整する。
より高度なサイバー攻撃に備えるためには、技術的な強化が必要です。特に、中小企業が直面しやすいランサムウェア攻撃・標的型攻撃メール・情報漏えいといったリスクを軽減するためには、EDR(エンドポイント検知・対応)、VPN(仮想プライベートネットワーク)、アクセス管理の強化が重要になります。
これらを適切に導入・運用することで、外部からの攻撃だけでなく、内部のセキュリティリスクも低減し、より強固な防御体制を構築することができます。
企業がどれだけセキュリティ対策を強化しても、100%攻撃を防ぐことは不可能です。そのため、「情報漏えい」「マルウェア感染」「標的型攻撃」などのインシデント(セキュリティ事故)が発生した際の対応力が、企業の被害を最小限に抑える鍵となります。
① 事前にインシデント対応計画を作成する
インシデント発生時に迅速な対応ができるよう、対応フロー(報告 → 初動対応 → 復旧 → 再発防止)を明確化しておくことが重要です。「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に沿って、基本的な対応策を整備し、以下のポイントを決めておきます。
② 事前に訓練を実施し、迅速な対応を可能にする
対応マニュアルを作るだけではなく、実際に対応できる体制を整えることが重要です。定期的な訓練を実施し、インシデント発生時に迅速な対応ができるよう準備をしておきましょう。
訓練を通じて実際の対応能力を向上させることで、被害拡大を防ぐことが可能になります。
③ 「インシデントが発生しても慌てない体制」を構築する
IPAのガイドラインでも強調されているように、計画を作るだけでは不十分であり、実際に対応できるかを訓練で検証することが必要です。外部の専門家やサービスを活用し、実効性のある対応体制を整備することで、インシデント発生時にも冷静に対処できるようになります。
詳細な手順については、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」を活用し、自社に適した対応策を検討することをおすすめします。
「セキュリティ対策の重要性は理解しているものの、社内での実施が難しい」「専門知識がなく、体系的に学びたい」「取引先からのセキュリティ基準の要求が厳しくなった」といった課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。そのような場合、外部のセキュリティ教育・研修サービスを活用するのも有効な手段です。
IPAの調査によると、サイバー攻撃の9割以上は「人的ミス」から発生しています。技術的な対策を施していても、フィッシング詐欺や標的型攻撃、内部不正といったリスクは、社員の誤った対応が原因で被害につながることがあります。「知っていれば防げたはずのミス」を減らすためにも、適切な教育が不可欠です。
外部のセキュリティ研修を活用することで、最新のサイバー脅威に対応する知識を習得し、より実践的な訓練を受けることが可能になります。専門家の指導のもと、実際の攻撃手法を想定した演習を行うことで、即戦力としてのセキュリティ対策スキルを身につけることができます。
「どこから始めればいいかわからない」「自社で研修を実施するのが難しい」といった企業の課題を解決するために、AIQVE ONEのサイバーセキュリティ教育サービスは、幅広い実践的な研修をワンストップでご提供しています。
「どんな研修が必要かわからない…」という企業様向けに、無料相談も可能です。最適な研修内容や実施方法について、専門家がサポートいたします。
また、セキュリティ対策に関するご相談も承ります。セキュリティに関する最初の相談先として、お気軽にご相談ください!
2014年に新卒でIT企業に就職後、データセンターや大手通信会社で運用・保守の仕事に従事。その後はテストエンジニアとなり、数年の時を経て2019年にサイバーセキュリティ領域に転身。省庁案件やSOCアナリスト(サイバーセキュリティ監視)業務、セキュリティ教育業務を経て現職。ゼロからサイバーセキュリティについて知ってもらい、人材育成を行えるよう学習及びコンテンツ作成に従事している。
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